Thu September 24, 2009 [ Comments: 0 ]
陸上部 Ⅴ
「ヨーイ!」
サッカー部Kが飛び出した・・・。
明らかにフライングである。つられて、みんなも走り出す。
呆気に取られたオレは、金縛りみたいに動けない。
フライングのピストル音を待てばいい、と反射的に思ったのかもしれない。
スターターの体育教師と目があった。
「ニイ、ええから、走れ!」
「エーッ! ウソォー!」と言いながら、走り出すオレ。
すでに最後尾のヤツも、20mは先を行っていた。
「あの体育教師のヤロー、ぜったい許さん!!」
と憤りつつ、全力でダッシュ。
300m地点で、バスケットボール部の男前に追いつく。
息づかいが荒い・・・コイツはやっぱ200mまでの男だと確信し、
一気に前に出る。女子の悲鳴のような声がスタンドから聞こえる。
「・・・どうせ、オレは悪者じゃあ!」とふてくされつつ、
前を見ると、まだ二人いる。サッカー部Kと副キャプテンだ。
「あのヤロー」と念じつつ、スピードをさらにあげる。
500m地点、二人に追いつく。
サッカー部Kは、かなり息が上がっているが、
副キャプテンは、冷静にみえた。オレはというと、その中間ぐらいか・・・。
残り200m。オレは仕掛ける。
副キャプテンとの一騎打ちになった。
ラスト100m。逆に、副キャプテンが仕掛けてくる。
前に出られた。オレは懸命に追うが、足が思うように出ない・・・。
ラスト50m。差は縮まらない・・・。副キャプテンはさらにスピードをあげた。
目の前が、白くハレーションをおこしていた。
両手をあげてゴールインする副キャプテンの背中が、ぼんやり見えた。
やられた・・・。
オレは、たぶん、うつむいてゴール。
スターターの体育教師が、芝生にへたりこんだ
オレ達のところへ歩いてくるのが見えた。
副キャプテンの前を通りすぎて、オレに一言。
「ニイ、ごめんなあ〜。お前なら抜けると思ったんよ〜」
呼吸がまだ整わないオレは、体育教師をにらむ。
「お・ま・え・なあ・・・」
教師を「おまえ呼ばわり」したのは、後にも先にも、この時限り。
レース中ずっと、この教師は、
「ニイ、行けえ〜!」と大声援を送っていたんだそうだ。
後から悪ガキどもが教えてくれた。