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陸上部 Ⅴ

「ヨーイ!」

サッカー部Kが飛び出した・・・。

明らかにフライングである。つられて、みんなも走り出す。

呆気に取られたオレは、金縛りみたいに動けない。

フライングのピストル音を待てばいい、と反射的に思ったのかもしれない。

スターターの体育教師と目があった。

「ニイ、ええから、走れ!」

「エーッ! ウソォー!」と言いながら、走り出すオレ。

 

すでに最後尾のヤツも、20mは先を行っていた。

「あの体育教師のヤロー、ぜったい許さん!!」

と憤りつつ、全力でダッシュ。

300m地点で、バスケットボール部の男前に追いつく。

息づかいが荒い・・・コイツはやっぱ200mまでの男だと確信し、

一気に前に出る。女子の悲鳴のような声がスタンドから聞こえる。

「・・・どうせ、オレは悪者じゃあ!」とふてくされつつ、

前を見ると、まだ二人いる。サッカー部Kと副キャプテンだ。

「あのヤロー」と念じつつ、スピードをさらにあげる。

500m地点、二人に追いつく。

サッカー部Kは、かなり息が上がっているが、

副キャプテンは、冷静にみえた。オレはというと、その中間ぐらいか・・・。

残り200m。オレは仕掛ける。

副キャプテンとの一騎打ちになった。

ラスト100m。逆に、副キャプテンが仕掛けてくる。

前に出られた。オレは懸命に追うが、足が思うように出ない・・・。

ラスト50m。差は縮まらない・・・。副キャプテンはさらにスピードをあげた。

目の前が、白くハレーションをおこしていた。

両手をあげてゴールインする副キャプテンの背中が、ぼんやり見えた。

やられた・・・。

オレは、たぶん、うつむいてゴール。

 

スターターの体育教師が、芝生にへたりこんだ

オレ達のところへ歩いてくるのが見えた。

副キャプテンの前を通りすぎて、オレに一言。

「ニイ、ごめんなあ〜。お前なら抜けると思ったんよ〜」

呼吸がまだ整わないオレは、体育教師をにらむ。

「お・ま・え・なあ・・・」

教師を「おまえ呼ばわり」したのは、後にも先にも、この時限り。

 

レース中ずっと、この教師は、

「ニイ、行けえ〜!」と大声援を送っていたんだそうだ。

後から悪ガキどもが教えてくれた。