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陸上部 Ⅵ

かくして、オレは予選会を2位通過し、

晴れて「郡陸」の出場枠を獲得したかに思えたが、

現実は、そう甘くなかった。

 

「郡陸」は一人2種目までエントリーできる。

つまり強者は、確実に2種目を占拠してしまうわけだ。

最終選考は、陸上部顧問であるM先生を中心に体育教師が協議し

決定することとなっていた。となると、オレは分が悪い。

なんせ、M先生はオレたち悪がきを目の敵にしてたから・・・。

ま、これまでの悪行を考えれば、当然なんだけど。

 

予選会から1週間後の昼休み、「郡陸」出場メンバーが掲示された。

800m出場者  S(キャプテン)、 K(バスケットボール部主将) 補欠:ニイ

とあった。

「ほ・け・つ」って何?

オレの口は、たぶん半開きになっていたと思う。

一緒に見ていた悪ガキどもも、全員枠外。

ふだんなら、「補欠」となったオレをからかってきそうなもんだが、

みんな辛気くさい顔をしていた。

そのうち、悪ガキ仲間の一人、Tが興奮してしゃべりだした。

「ニイが補欠ってどういうわけや! おかしいやろ・・・。

ニイは2位やったんやぞ。すまん、シャレちゃうけん。

オレ納得できんわ、M(陸上部顧問)んとこに抗議にいったる!」

「アホ、カッコ悪いからやめてくれ。しゃーないやん、もう決まったんやから・・・」

とオレ。

 

悪ガキ仲間のTは、予選会では1500mに出場し3位に終わっていた。

「オレ、虚弱体質やから」という持ちネタがあって、

レース途中で無意味に棄権し、よく笑わかしてくれた。

そいつが、予選会では最後まで必死に食らいついていた。

結局、野球部と卓球部のヤツに歯が立たなかっが、

それでもオレは良いレースを見せてもらった、と内心思っていた。

 

怒りの納まらないTは、オレの制止を振り切ってM顧問のところへ行った。

Tが聞いたM顧問の説明は、こうだった。

「キャプテンS君は実績から言って異論ないやろ。

バスケット部のK君はな、400mで2位やったんやけど、あいつは後半型でスピードもある。

ニイは、後半失速しとったやろ・・・。あれじゃ、アカン。」

 

今思えば、M顧問の判断はとても正しい。

が、中坊の悪ガキに冷静で客観的な思考などない。

 

オレは、また練習をさぼって「ツケ屋」に通うようになった。