Fri September 25, 2009 [ Comments: 0 ]
陸上部 Ⅵ
かくして、オレは予選会を2位通過し、
晴れて「郡陸」の出場枠を獲得したかに思えたが、
現実は、そう甘くなかった。
「郡陸」は一人2種目までエントリーできる。
つまり強者は、確実に2種目を占拠してしまうわけだ。
最終選考は、陸上部顧問であるM先生を中心に体育教師が協議し
決定することとなっていた。となると、オレは分が悪い。
なんせ、M先生はオレたち悪がきを目の敵にしてたから・・・。
ま、これまでの悪行を考えれば、当然なんだけど。
予選会から1週間後の昼休み、「郡陸」出場メンバーが掲示された。
800m出場者 S(キャプテン)、 K(バスケットボール部主将) 補欠:ニイ
とあった。
「ほ・け・つ」って何?
オレの口は、たぶん半開きになっていたと思う。
一緒に見ていた悪ガキどもも、全員枠外。
ふだんなら、「補欠」となったオレをからかってきそうなもんだが、
みんな辛気くさい顔をしていた。
そのうち、悪ガキ仲間の一人、Tが興奮してしゃべりだした。
「ニイが補欠ってどういうわけや! おかしいやろ・・・。
ニイは2位やったんやぞ。すまん、シャレちゃうけん。
オレ納得できんわ、M(陸上部顧問)んとこに抗議にいったる!」
「アホ、カッコ悪いからやめてくれ。しゃーないやん、もう決まったんやから・・・」
とオレ。
悪ガキ仲間のTは、予選会では1500mに出場し3位に終わっていた。
「オレ、虚弱体質やから」という持ちネタがあって、
レース途中で無意味に棄権し、よく笑わかしてくれた。
そいつが、予選会では最後まで必死に食らいついていた。
結局、野球部と卓球部のヤツに歯が立たなかっが、
それでもオレは良いレースを見せてもらった、と内心思っていた。
怒りの納まらないTは、オレの制止を振り切ってM顧問のところへ行った。
Tが聞いたM顧問の説明は、こうだった。
「キャプテンS君は実績から言って異論ないやろ。
バスケット部のK君はな、400mで2位やったんやけど、あいつは後半型でスピードもある。
ニイは、後半失速しとったやろ・・・。あれじゃ、アカン。」
今思えば、M顧問の判断はとても正しい。
が、中坊の悪ガキに冷静で客観的な思考などない。
オレは、また練習をさぼって「ツケ屋」に通うようになった。